【祭みたまま】今年のはっちゃんの蘇民祭

★ 情報提供者:はっちゃん

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 こんばんは はっちゃんは今年も岩手県水沢市黒石寺の蘇民祭へ行って来ま
した。毎年行って今年で4回目。今年の「はっちゃんの」蘇民祭を報告させて
いただきます。

 
photo-mikosi

 毎年旧暦の正月7日の夜から8日の早朝にかけて行なわれる祭ですから、今
年は2月3日から4日に当たりました。柳津の七日堂裸詣りの時もそうだった
のですが、今回は二日間とも休みがとれませんでした。どうも今年は当たりが
悪いですね。結局今年は夕方の新幹線で出かけ、翌一番の新幹線でとんぼ返
り。そして一日仕事のハードスケジュールになってしまいました。
 でも、そんな思いをしてもやっぱり行きたい、はっちゃんにとって特別な思
い入れのある祭なんです。
【籠り小屋】
 夜9時頃に現地に入って、例年通りの籠り小屋に、荷物を預けます。おなじ
みのメンバーに去年一年分の「祭みたまま」の写真入のレポートを進呈、旧交
を暖めます。籠り小屋は昔はむしろだけで出来た小屋だったようですが、今は
風避けに青いビニールシートで覆われて中で、炭を焚いて暖まります。
 毎年はっちゃんがお世話になる籠り小屋は二箇所あります。一箇所は境内の
入口のほうにあって「だれでも歓迎・会費1000円・飲み放題食べ放題」の小屋
です。アマチュア写真家のグループが作っている小屋ですが、こちらはレスト
ランとして、荷物を預かってもらったり、熱燗を飲んだり、熱いお粥や大根煮
をいただいたりするときに御邪魔します。
 もう一箇所は、参加者だけが入る小屋で、小人数づつで車座になって、炭火
を囲んで談笑します。最初はちょっと抵抗がありますが、隅の方にでも座り込
んで暖まっているうちには、いつの間にか、馴染みになれます。どうせ皆同じ
祭気違いですから。ほとんど裸男ばかりですから、炭火もカンカン焚いて暖か
くすごすことが出来ます。参加者だけの小屋ですから争奪戦のときは誰もいな
くなってしまいます。荷物や貴重品の点では若干不安な点もありますがまあ滅
多に事故はないようです。
【裸参り】
 夜10時に裸参りが始まります。はっちゃんも褌と足袋だけの姿になって、庫
裏に廻って、薬湯(元日から七日までお寺の竃でぐらぐら煮立てた白湯です。
邪気を払い風邪などを引かないといわれています)を一椀いただき列に加わり
ます。裸参りは「祈願祭」または「夏参り」ともいいます。明治になって素っ
裸はいけない指導され「夏参り(何か一枚身に着けて参ること)」と言うこと
になったといいます。でも今でも素っ裸の人も沢山います。
 掛け声はみんなで「ジャッソー、ジョヤサー」とかけます。でも本来は
●裸参り「ジョヤサ(常屋作・トコシエスマイツクル)」
●柴燈木、別当、鬼子の各御登り「ユー(祓戸・あるいは仏の意だそうです)」
●争奪戦「ジャッソー(邪正・ヨコシマヲタダシクスル)」
と使い分けるんだそうです。[末武保政著 黒石寺蘇民祭 文化総合出版]
 掛け声を掛け気合いを入れて皆で進みます。境内のはずれ雪融け水の流れる
瑠璃壷川(別名山内川 幅4〜5mの小川です)で桶の水を頭からかぶりを水
垢離をした後、本堂の中を練り参拝し、さらに妙見堂を廻って参拝して一周で
す。これを3回繰り返します。昔は夕方から初めて20回以上は参加しないと
争奪戦に参加できないと言われていたそうですからすごいですね。
 はっちゃんは今年は、使い捨てカメラを持っていきましたので、廻りにい
た、黒半纏の親方衆に自分の水垢離の写真を撮ってもらいました。
自分の水垢離の写真は初めて手に入りました。
 
photo-mikosi

また今までは普通の足袋を履いていたのですが、今年は古くなって穴が空いた
祭用の地下足袋を持参したので、足先の痛
み、冷たさはぐっと楽でした。でも、そんな軟弱なことで「祈願祭」の願いを
聞いていただけるのでしょうか。昔の人は身体を痛め究めることで願いを聞き
届けてもらおうとしたんでしょうね。でも地下足袋でも川のなかに入った後は
濡れて足の爪先がしびれてくることは同じなんですが。靴を履きなれた現代人
には充分苦痛に耐えたということでなんとか願いを聞いていただきたいもので
す。
【柴燈木登】
 その後は11時半から柴燈木登(ひたきのぼり)が始まります。はっちゃんが
外へ出たのは、12時頃だったでしょうか。松の半割りの丸太が高く積み上げら
れて燃え盛っています。裸の若者がそのうえで気勢を上げ山内節を歌います。
はっちゃんは前に登った事はあるのですが、今年は火勢が強すぎあきらめまし
た。でも登った年は、2〜3日後まで炭の入ったタンがでて参りました。まあ
人間の薫製ですから。
 そして同時に蘇民袋争奪戦の参加申し込みをすませておきました。
 それからまたレストランの方の籠り小屋へいって、お酒と食べ物を戴き、仲
間の籠り小屋へ入って談笑した後、うたた寝を決め込みます。なんせ明日も在
りますから。
【別当登・鬼子登】
 ハッと気が付いた時は、午前4時にならんとしたときでした。炭火の心地よ
さと酒の酔いが、眠りの国へ連れていってくれていました。あわてて外へ出て
申し込んでおいた褌と足袋を受け取って小屋へ戻ろうとしたその時、丁度鬼子
の列が「ユー、ユー」の腹の底から出る掛け声と共に進んでくるところでし
た。寝ぼけていたはっちゃんは危うく、鬼子の列を横切りそうになり、廻りに
いた親方に制止されました。尊い行列の邪魔したものは、蒔で頭を打ち割られ
ても、文句を言えないのが祭です。危ない所でした。というわけで、今年の別
当登は全く見ないで終ってしまいました。
【蘇民袋争奪戦】
 急いで支度して、衣類を再度レストランの籠り小屋に預けて、御堂にはいり
ます。今年はもう、格子のほうは人が取りついていて登るすき間がありませ
ん。仕方なく堂の床で争奪戦の始まるまで待機します。大声で「ジャッソー・
ジャッソー」の掛け声。
 鬼子が立ち去り、焚き火が消された後、蘇民袋を持った総代が現われ、争奪
戦が始まります。しばらく堂内で揉みあった後、蘇民袋が刃物で大きく切り裂
かれ、小間木(護符)がバラバラとこぼれ落ちます。去年は格子の上にいて袋
の在り場所が、分かっていて争奪戦の渦に飛び込んだので、袋から直接小間木
を取ることが出来たのですが今年はやはり出遅れがひびいて、やっと床に落ち
た小間木を家族の数だけ拾うことが出来ました。しゃがんだら人の下敷きにな
る恐れもありますから、立ったまま足の指でつまんで拾うのですが、こんな時
は地下足袋は不便ですね。
 とりあえず今年の目的は達成しました。小間木を落とさないように、褌の間
に巻きこんでしばらく争奪戦に参加しましたが、袋が堂内から境内へ出た頃に
一人そっとリタイヤして、争奪の輪から離れました。地下足袋を履いているこ
ともあって余り絡むと迷惑になりますから。
 衣類を置いた小屋で着替え、荷物を見ていてくれた人に礼を言って、今年の
はっちゃんの蘇民祭は終りました。

 一番の東北新幹線の車内で、歯を磨き、髭を剃り、ワイシャツにネクタイを
締め、ゆっくりと日常に戻ります。東京に着いたら朝から会議漬けなんです。

    はっちゃん @NIIZA saitama QZM02610 でした。




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