【祭みたまま】岩手県水沢市黒石寺蘇民祭

★ 情報提供者:はっちゃん

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【祭みたまま】蘇民祭 平成9年 

 こんばんは みなさん。毎度はっちゃんの「お祭り見たまま感じたまま報
告」です。2月14日は旧暦の1月7日に当たります。今年も岩手県水沢市郊外
の黒石寺で蘇民祭が催行されました。古式豊かな、しかも非常に珍しい祭りで
すのではっちゃんも今年で連続3回目の参加です。

【祭のまえに】
 蘇民祭はその名のとおり蘇民将来を祭り、五穀豊穰、家内安全を祈願する祭
りですが、岩手県には水沢のほかにもいくつもの場所で、この時期に、行われ
ているようです。今年の蘇民祭のパンフレットには岩手県全体の蘇民祭が、国
の無形民俗文化財に、指定されたと書いてありました。
 祭りは夜10時から始まりますが、はっちゃんは朝早く自宅をでて東北路をバ
スと鈍行列車でゆっくり下り、7時頃に現地につきました。例年のとおり小学
生達のならす太鼓がこれから始まる勇壮な祭りの、雰囲気を高めています。境
内にはいくつもの藁掛けのお籠り小屋(青いビニールで風避けがしてありま
す。)があり中では炭火が起こされています。はっちゃんは今年も「延歴八年
の会」と、消防団・交通警備本部が入っている、籠り小屋にお世話になりまし
た。ついて先ずは、くるみもち、磯部巻き、キムチ鍋で腹ごしらえ。そして、
もちろん寒く長い夜を過ごすためのコップ酒グイグイです。

【裸参り】
 夜10時からはじまります。祈願祭または夏参りともいいます。夏参りとは、
体になにか、一つだけまとって参ることをいいます。この祭りは、本来は全裸
でする祭りで、女衆が参加する場合は下着を一枚だけまとって、夏参りとした
ものだそうです。でも今は全裸の人もたくさんいますが、ふんどしに足袋が一
般的な参加の姿です。他に上半身だけ裸の人もいます。裸になってすぐに、庫
裏へ薬湯を戴きにいきました。元日から大釜でぐらぐら煮立たせた熱湯です。
お椀で一杯戴きました。
 六尺一丁に足袋だけになり、今年ははっちゃんも祈願することがあったの
で、角灯にろうそくを点け片手に掲げて参列しました。
 庫裏からでて、瑠璃壷川(別名山内川 幅4〜5mの小川です)で水垢離を
し、本堂の中を練り歩きその妙見堂を廻って一周です。これを3回繰り返しま
す。はっちゃんは去年はちゃんと3回水垢離しましたが、今年は3回目だけ水
垢離をすることにして最初2回はパスしました。でも体の毛穴がちゃんと引き
締まらないためか、寒いことは結局同じだったようです。ちゃんと歯の根が会
わなくなりました。
 今年は本堂に参ったときに、住職(この寺は今は有髪のあまさんが住職です)
さんがいらしたので、握手をしていただきました。

【柴燈木登】
 続いて11時半から柴燈木登(ひたきのぼり)がはじまります。お寺の鐘の合
図で、胡麻殻、豆殻、柴等をもった人達が腰を低くかがめて「イヨー、イヨ
ー」と声をかけながら、行進してきて、あらかじめ積んであった、大きな薪の
山(半割りの松を井桁に組んだ高さ2メートル以上に組み上げたもの)に胡麻
殻や焚き着け柴等を使って火をつけます。
 松に火が付いてくると、裸の男達が、角灯を持って上に登り、煙をあびなが
ら気勢をあげます。去年は多くの人が上がったのですが、今年は少々火が強す
ぎたのか、私が見たときは、2〜3人しか登っていませんでした。またいつも
は上で山内節を歌う人もいるのですが、今年はその人も見かけませんでした。
はっちゃんも裸になって、上がる準備をしていたのですが、やはり火勢の強さ
に、今年はあきらめました。
 火が強くなり、上に登るのが、危険になった頃から、火の着いた薪を抜きだ
し、火の着いて無い方を手に持って、やはり腰を低くして「イヨー、イヨー」
と声をかけながら炎で地面や床を払って堂内を一周してまた、柴燈木の所まで
戻ってきます。はっちゃんが見たのは初めてです。これは3人くらいの人がや
っていましたが、地元の人に聞くと昔はもっとたくさんの人がやっていたそう
です。火の着いた太い薪を振りながら進んでいく姿はいかにも邪気を払うとい
う感じがあふれていました。

【蘇民袋争奪戦参加者受け付け】 
 次の祭事は15日午前2時からです。その間の午前0時からこの祭りクライマ
ックス蘇民袋の参加者の受け付け登録が始まっています。今年から変った点
は、去年まで参加登録すると、無償で支給された足袋とふんどしが今年から有
料になったことです。千円でした。(もちろん自分で用意してきた人は無料で
す)そのかわり、去年まで単にさらしをきっただけだったふんどしが今年から
「黒石寺 蘇民祭」の朱印が押してありました。

【別当登】
 午前2時から、別当(お寺の住職)及氏子総代が蘇民袋をささげ持ってあら
われ、内陣に入っていきます。ほら貝、太鼓等も隊列にはいるそうですが、例
年のごとく眠くなるときなのでしっかりみていません。これから争奪戦の始ま
る、午前4時すぎまで、蘇民袋の厄払いをするのでしょうか。
【鬼子登】
 鬼子登りは午前4時からはじまります。はっちゃんは今年は鬼子登りをちゃ
んと見るために、本堂の格子にとりつきました。内陣と外陣を仕切る丈夫な格
子です。祈願祭の時には開け放たれていて、別当さんと握手まで出来たのです
が、今はこの後の争奪戦にそなえてか、がっちりと格子で閉め来られていま
す。格子は裸男達がぎっしり取りついて事の次第を見守っています。
 水垢離をとった素裸の年男の氏子を先頭に、松明や柴を持った男達がやって
きます。外陣の中央で大きく火が焚かれます。鬼の面を逆さに背負った、幼児
が強力の背におぶさって進んできます。先頭の年男は丸裸で足袋すらもはいて
いません。足元もふらふらしてつるつる滑ったように入ってきますが、決して
酒に酔っている訳でなく、祭りで精神的にトランス状態になっているように見
えます。大変な迫力でした。火の廻りを行列が2回くらい廻った後、突然火が
消されます。堂内は真っ白い煙に包まれ名にも見えなくなります。特に格子に
つかまったはっちゃん達は、煙に巻かれてしまいます。

【蘇民袋争奪戦】
 そして煙が消えた頃蘇民袋が、どこから現われて、気が着いた時には、蘇民
袋の争奪戦が始まっていました。下にいた裸男達は当然袋に取りついて、引っ
ぱり始めます。しばらく、引っぱりあった所で短刀を持った親方が現われ、袋
を大きく切り裂きます。そして小間木が床にバラバラと飛び散ります。
 今年はっちゃんは、どうしても一度も床におちてない小間木がほしかったの
で、この直後に争奪戦の渦に飛び込みました。裸男の間の袋とおぼしきところ
に手を突っ込んで、小間木をつかみ取るのです。ようやく3つだけつかみ取る
ことが出来ました。1つを口にくわえ、2つをしっかり右手にもち、あとで床
に落ちているのをいくつか足で拾い左手に持ちました。
 格子に取りついた裸男達は、各々ころあいを見計らいながら、渦に飛び込ん
できます。
 小間木が裸男や見物衆にすっかり拾われてなくなった頃に袋は堂内から境内
へ、境内から雪の野原へ、人の渦に巻かれながら引き千切られていきます。
 はっちゃんは今年も最後まで参加しないで、袋が境内をでたあたりでリタイ
ヤしました。床に落ちなかった小間木のうち1つはどっかで落としてしまい、
床から拾った小間木は堂内の見物衆に進呈し、残った小間木2つをしっかり鞄
にいれて、岐路に着きました。
 これで今年の蘇民祭報告を終ります。



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